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「熱が出たら、すぐ薬!」となっていませんか?

急な子どもの発熱。でも、すぐに薬に頼らないで! 発熱の役割を知り、解熱剤を使うタイミングを学びましょう。

 大人よりも頻繁な子どもの発熱。驚くほどの高熱だったり、病院が開いていない夜に限って急な発熱があったり…。そのたびに、はらはらしてしまいますね。でも、発熱そのものは、体に悪いことばかりではありません。

 そもそも熱が出るのは、ほとんどの場合、細菌やウイルスなどの病原体に感染したとき、それを排除しようとして体の中で免疫反応が起こるため。つまり、発熱は、体が病原体と戦っているサインなのです。

子どもはなぜ発熱しやすいの?

 では、子どものほうが大人よりも高熱が出やすいのはなぜでしょうか。大人は、たくさんの病原体に感染することを繰り返してきて、免疫力が高くなっています。それに比べて、子どもはまだ感染の経験が少なく、大人よりも免疫力が低いのです。その分、病原体に感染したときは、大人よりも熱を高く上げることで免疫力を高めようとします。

 では、病院も薬局も開いていない夜中に限って熱が出てしまうのはなぜでしょう。日中、子どもは幼稚園や保育所に行ったり、たっぷり遊んだりして、激しく活動します。そのため帰宅後に体が疲れて、どうしても夕方以降に熱が出るものなのです。「発熱はたいてい、夜起こる」と覚えておきましょう。

高熱は脳に影響しないの?

 高熱が出ると、脳への影響を心配する方がいますが、熱だけが理由で脳に障害を来すことはありません。熱の原因が、のどや耳などに付着した病原体であれば、脳への影響は心配ありません。ただし、まれに病原体が脳に入って、髄膜炎や脳炎を起こす場合もあります。その場合は、発熱だけでなく、意識がぼんやりする、あまり動かなくなる、吐く、けいれんする、などの症状を伴います。特に吐いたりけいれんしたりしたときは要注意なので、すぐに受診してください。

発熱時、家庭での応急処置は?

 保冷剤をおでこや首の太い動脈の辺りにはってあげるのがよいでしょう。わきの下に、水枕や冷やしたタオルをポリ袋に入れて挟むのもお勧めです。

 また、熱があるときに湯船に入ったりシャワーを浴びたりするのは、体力を消耗させることになるのでやめましょう。温かい物を食べるのも勧められません。悪寒があるときは温かい物を食べてもいいですが、熱があるときは子ども自身が熱い物を嫌がるからです。子どもが嫌がるものは無理やり食べさせず、アイスクリームやプリンなど、冷たくてのど越しのよい、甘い物を食べさせるのがいいでしょう。これらには水分と糖分が多く含まれているので、食欲がないときの水分・カロリー補給になります。

 そして汗がたくさん出始めたら、熱が下がるサイン。そのときはあまり冷やす必要はないので、氷枕を頭の下に置く程度にし、何度も着替えさせてあげてください。

解熱剤は使っていいの?

 発熱は病原体の増殖を抑え、免疫力を高めるので、必ずしも熱を下げようとする必要はありません。ただし、高熱が続くとどうしても体力を消耗して、食欲も低下してしまいます。体の具合が悪い状態が続くとお子さんもつらいので、一時的にでも体が楽になり、食べられるようになるように、解熱剤を使っても構いません。解熱剤には痛み止めの作用もあるので、単に熱を下げるだけでなく、頭痛や筋肉痛、体のだるさも軽減してくれます。

 ただ、解熱剤を使っても感染そのものが治るわけではありません。解熱剤は、あくまで一時的に体を休ませるための物。熱が下がっている間に、食べ物を少しでも口にして体力を回復させて、また病原体との戦いに戻るのです。

 また、解熱剤を使っても熱が下がらなかったり、頭痛が治まらなかったりしたときは要注意。髄膜炎の可能性もあるので、すぐに病院に行きましょう。

解熱剤を使うタイミングは?

 解熱剤を使える対象年齢は、生後6か月以上。家庭で解熱剤を使う場合は、基本的に「熱が38.5℃以上あって、元気がないとき」が目安です。高熱でも機嫌がよく元気であれば、あえて使う必要はありません。子どもが楽になるようにするのが目的なので、夜中、苦しくて眠れないときなどに使うといいでしょう。熱が下がり頭痛も取れれば、眠ることができます。

 市販薬の場合は、アセトアミノフェンという系統の解熱剤を使うようにしてください。ブルフェン、アスピリン系は、子どもには使いません。市販の子ども用解熱剤の多くは大丈夫ですが、一部、子どもが飲まないほうがいい成分が入っていることもあるので、薬局で手に入れたい場合は、薬剤師に子どもの年齢と体重を伝えて、「アセトアミノフェンのものをお願いします」と相談し、その子に合った投与量や使用法なども聞きましょう。

 特にインフルエンザでは、解熱剤はアセトアミノフェンしか使わないほうが安全です。インフルエンザに市販薬の解熱剤でアセトアミノフェン以外の成分のものを使うと、インフルエンザ脳症など、症状を悪化させることがあります。

 もし、以前病院で処方された解熱剤が残っていれば、それを使ってもよい場合があるので、医師に確認しておきましょう。その際、薬の保管の仕方に気を付けてください。粉薬の場合は、お菓子の缶などに乾燥剤と一緒に入れておけば、湿気らずに半年はもちます。座薬の場合は、冷蔵庫に入れておけば、最低半年もちます。どんな薬も、1年以上たったものは捨てましょう。

病院に行く目安は?

 38.5℃以上の発熱が見られたら、病院に行きましょう。特に生後3か月未満で38.5℃以上発熱する場合は、髄膜炎など重症の細菌感染症のことがあるので、早急に受診してください。それ以上の年齢の場合は、38.5℃以上の熱があっても、子どもが比較的元気で吐いておらず、頭痛もないなら、1日は様子を見て、翌日病院に行きましょう。夜に38.5℃以上の熱が出ても、朝になると下がってしまい、安心してしまうことがありますが、そんなときはたいてい、また次の夜に発熱します。ですから、朝、熱が下がったとしても、念のため受診しましょう。

 さまざまな病気の可能性があるので、熱だけで判断せず、顔色が悪い、ぐったりしているなど、ほかの症状を観察することも大切です。熱がなくても、やたらと機嫌が悪くて泣いてばかりなど、なんらかの病気のサインを発していることもあります。また、全然動かない、しゃべらない、尿が出ない、ぐったりしているなどの症状があれば、夜間でもすぐに受診してください。

熱性けいれんとは?

 短期間に一気に熱が上がったとき、脳が反応して一時的にけいれんして意識が飛んでしまうことを「熱性けいれん」と言います。手足をばたばたと動かして、白目をむいたり、泡を吹いたり、失禁してしまうこともあります。1歳半までの子どもに特に多いですが、3歳ぐらいでもけいれんを起こすことがあります。たいていは2〜3分で治まりますが、治まった後でも至急受診しましょう。熱性けいれんならば、一時的なものなので治まれば大丈夫ですが、場合によっては、髄膜炎か脳炎ということもあります。見極めは難しいので、とにかくすぐに診察を受けましょう。

 けいれんが始まったら、着ている服を緩めて、吐いた物がのどに詰まらないように、顔を横向きにします。あおむけに寝かせたままだと、吐いたときに誤飲してしまうおそれがあります。けいれんが5分以上治まらない場合は、すぐに救急車を呼び、熱と、けいれんが続いている時間を測りながら待ちます。

 熱性けいれんを頻繁に起こす子どもには予防薬もあるので、熱が出たときのためにストックしておくことが大事です。予防薬と解熱剤を併用することもできるので、2つの薬を服用するタイミングを小児科でよく聞いておきましょう。

監修:
石川功治(たんぽぽこどもクリニック院長)

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