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「父ちゃんからの手紙」 〜Letter from Dad〜 写真家の父ちゃんが、長男林太郎君にあてた旅先からの手紙を、印象的な写真とともにお届けします。

Vol.13<和歌山〜徳島>

林太郎へ

 空は晴れているのに、雨が降ってきました。船の甲板に立つ父ちゃんの顔に雨粒が当たります。父ちゃんは和歌山港から船にのり、徳島港を目指しています。
 船に乗るお客さんの多くは、客室でテレビを見たり、横になったりとゆったりと時間を過ごしています。父ちゃんは船の甲板が大好きです。周りに何もない海の上は、考え事をするのにぴったりです。最近旅先でしばしば考えるのは、旅先で何を撮ってどんな写真をおみやげにしようか、ということです。林太郎の好きな動物や虫がいればいちばんですが、今日のように雨が降ったり、行かなければいけない所もたくさんありますから、なかなか思うようにはいきません。でも父ちゃんはどんな旅でも、こうして時間ができると林太郎たちのことを考えています。
 雨がやみました。雨上がりの海の上はとてもきれいです。こうして船に乗ったからこそ、そして雨の中甲板に立っていたからこそ、見ることができた風景です。今回の旅のおみやげが決まりました。帰りを楽しみに待っていてね。また手紙を書きます。

 
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公文健太郎プロフィール

1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』(東方出版)、『BANEPA―ネパール 邂逅の街―』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』(ともに偕成社)などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。

このコラムは、2013年4月〜2014年3月まで「おやこCANBook」で連載していた「父ちゃんからの手紙」1〜12の続きです。1〜12は下記バックナンバーをご覧ください。