Vol.17<青森県三沢市>
林太郎へ
雨ばかりですね。林太郎はどうしていますか? 父ちゃんがいる青森県三沢市も、ここ数日しとしと雨が降り続いていました。今日、午後になって少し空が明るくなり、やっと外を歩くことができました。ニンニクや人参の収穫、それにごぼう畑の草取りと、雨上がりの畑は大忙しです。
ところで、父ちゃん何度も青森には来てはいるのだけれど、いつも困ってしまうことがあります。出会う人とお話をしても、半分くらい言っていることが分からないんです。
今日も畑で草取りをするお父さんに声をかけました。
「やっと雨あがりましたね。忙しいですか?」
そしたらお父さんが言うんです。
「なんも。静かにやってるじゃー」
ん?ん?ん?
静かにやっている?
「おとうさん、何言ってるの分からないよ」
「あーあ、すまんすまん。ゆっくりやってるってことだよ」
そうですよね。このお父さん、静かじゃありません。大きな声でよくしゃべるんです。
こうして行き違いばかりの会話ですが、父ちゃんが分からない顔をしているのがおもしろいらしく、出会う人がみんな笑顔になってくれるからまあいいか、そう思っています。
(2014年7月6日)
公文健太郎プロフィール
1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』(東方出版)、『BANEPA―ネパール 邂逅の街―』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』(ともに偕成社)などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。