林太郎へ
トイレの壁にはってある世界地図を見てごらん。父ちゃんは今、地図のいちばん西の端っこ、セネガルのアルマジという岬にいます。だいぶ遠くに来ました。
今日も一日中街を歩き、写真を撮りました。セネガルの女の人の服装はとても鮮やかです。赤や黄色のブブという民族衣装が、セネガル人の濃い褐色の肌によく似合います。
背が低くて、肌の色が違う父ちゃんのことをみんなぎょろぎょろと見て、ちょっと緊張します。でも、ここで海を眺めていると、ここがおうちから、遠い違う国だということを忘れてしまいます。ゆっくりと暮れる夕日の美しさは、どこの国に来ても同じだからです。
こんなほっとする瞬間が好きで、父ちゃんは旅に出ます。
1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』(東方出版)、『BANEPA―ネパール 邂逅の街―』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』(ともに偕成社)などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。
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