林太郎へ

　ドンドン！　ドンドン！　バスの中に大きな音が響きます。バスはゆっくりと速度を落とし、たんぼのわきに止まります。お客が何人かバスから降りると、今度はドン！　という大きな音を合図にバスは急発進。エンジンを吹かし、バスは山道をぐんぐんと進みます。父ちゃんは今日、ネパールのカトマンズという街から、郊外の村行きのバスに乗りました。

　ネパールのバスはにぎやかです。古いエンジンの音、お客たちの話し声、ときには一緒に乗っているニワトリがココーッ！　そして、なんといっても乗っている人が車内の壁をたたく音がすごい。バスを止めたいときには２回ドンドン！　発車してもよいときは１回ドン！　とたたくのです。ここにはバス停がないのです。とてもびっくりするけれど、便利ですね。

公文健太郎プロフィール

1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』（東方出版）、『ＢＡＮＥＰＡ―ネパール 邂逅の街―』（青弓社）、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』（ともに偕成社）などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。