子どもならだれもが通る道、おねしょ。2~5歳児なら当たり前、とはいえ、あまりにも頻度が高かったり、周りの子どもたちがどんどんおねしょから卒業していると聞いたりすると、「小学校に行くまでに治るかな?」と心配になってしまうこともあるかもしれませんね。
「そもそも、なぜ子どもはおねしょをしてしまうの?」「病院で相談してみる目安は?」「家庭ではどんなふうにおねしょと向き合ったらいいの?」おねしょにまつわる疑問を解いて、親子共々、おおらかにおねしょと付き合っていく方法を探りましょう。
なぜ、おねしょをしてしまうの?
おねしょをしてしまう原因は、主に2つあります。 1つは、夜のおしっこの量が多いため。成長とともに、夜になるとおしっこの量を減らそうとする「抗利尿ホルモン」が脳から分泌されます。でも2~5歳ごろはまだ成長段階で、この抗利尿ホルモンの分泌リズムが整っていないため、夜のおしっこの量が少なくならず、おねしょをしてしまうのです。
もう1つは、ぼうこうがまだ小さく、おしっこをためられないため。通常、2~3歳ごろからぼうこうが大きくなり始め、4~5歳ごろには、夜のおしっこをためられるぐらいの大きさに成長します。ただ、ぼうこうの成長には個人差があるので、中には、まだぼうこうがおしっこをためきれるほどの大きさになっていない子どももいます。また、ぼうこうが小さいうちは敏感になり、少しおしっこがたまるだけで出したくなる「過活動ぼうこう」になってしまう場合もあります。
この2つの原因が重なることもありますし、この原因以外に、睡眠の質がよくない場合や、疲れやストレス、胃腸が弱いなどの体質によっておねしょをしてしまうこともあります。
小学生になってもおねしょが続いたら、病院で治療を
ぼうこうなどが成長段階の2~5歳児の場合、成長に伴って徐々に治っていくのを待っていて問題ありません。ただし小学生になっても続く場合は、「おねしょ」と言うよりも「夜尿症」という病気としてとらえて、小児科で治療をしてもらったほうがいいでしょう。実際、夜尿症の患者さんはほとんどが小学生以上、特に10代が多いです。小学生ぐらいになると、泊まりの行事も増え、友達の目も気にするようになるなど、子ども自身がおねしょを気にして、自信をなくしてしまうこともあります。病院で処方される薬を服用しつつ治療を進めて、少しずつおねしょの頻度が減っていけば、子どもの不安感もなくなります。治療をするかどうかを判断する際の目安は、以下を参考にしてみてください。
また、おねしょだけでなく、トイレトレーニングがとっくに終わっているのに昼間もおもらしをしてしまったり、おしっこの回数が昼夜ともに多く、おむつを1日に20回以上替えなければならなかったりする場合は、膀胱炎など別の病気も考えられます。その場合は、6歳未満であっても病院で相談してみてください。
【年齢ごとの治療の目安】
家庭でのおねしょとの付き合い方
おねしょは本人のせいではない……と分かっていても、毎日繰り返したり、友達はおねしょをしていないと知ったりすると、つい不安が募って、いらいらしてしまうこともあるかもしれませんね。ただ、おねしょは成長段階で避けられないものであり、小学生になれば病気として扱われるもの。子どもを責めても、本人が傷つくだけで意味がありません。
「どうしてしちゃうの?」と厳しく接するよりも、「家族みんなで治していこう」という態度で臨みましょう。もし、子どもがおねしょを気にしたら、「大丈夫だよ」「明日はしないかもしれないよ」と声を掛け、笑顔で接しましょう。親御さんがゆったりと構えていると、子どもは気持ちが落ち着きます。子どもの不安感を取り除くことは、おねしょを治す近道です。もちろん、おねしょをしなかった日は、思いっきり褒めてあげることも大事です。
おねしょはいつか終わるもの。下に挙げた、家庭でできる工夫も参考にしながら、親子一緒に穏やかな気持ちで付き合っていきましょう。
おねしょを治すための工夫
・「早寝早起き」で生活習慣を整え、眠りの質を高める
寝不足や浅い眠りは、おねしょを悪化させる原因になります。まずは生活習慣を整えて、睡眠時間をしっかり確保しましょう。安心して眠れるように、寝る前に絵本を読むなどの「入眠儀式」を取り入れたり、夕食後や寝る前のひととき、穏やかな音楽などをかけて、子どもがリラックスできる静かな時間を設けたりしてもよいでしょう。
・夕食後2時間は、水分の摂取量を少なめに
夕食に摂取した水分は、食後2時間の間に、ほとんど体内から出てしまいます。その2時間の水分の摂取量を、5歳以下なら100mlほど、6歳以上なら200mlほどに抑えましょう。そうすると、夜間の尿の量が多くならずに済みます。ただし、夏場などの暑い時期は、脱水症状にならないよう、子どもの様子を見て調整してください。
・夜中、おしっこをさせるために子どもを起こさない
おねしょを防ぐために、夜中に子どもを起こしておしっこをさせることがありますが、実は逆効果。夜のおしっこの量を減らそうとする「抗利尿ホルモン」は、夜、眠ってから少しずつ脳から出始めます。ところが、途中で起こしてしまうと、せっかく量が増え始めたホルモンが減ってしまいます。ホルモンをきちんと分泌させるためにも、夜の深い眠りが必要なのです。
・おむつなどは大いに使って、親子の心の負担を減らそう
「3歳でおむつは卒業したのだから」などと考える必要はありません。おむつをして安心感を得られるなら、何歳でもはいたほうがよいでしょう。おねしょをしてパジャマやシーツが汚れることを子どもが負担に思うよりもよいのです。布団を汚さずに済む防水シーツなども使えば、後始末が最小限に済み、親御さんの負担も少なくなります。「年長さんでも夜はおむつ。おねしょの頻度が少なくなったら、たまにはパンツにしてみる」くらいの楽な気持ちで。
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