大学の女子学生120名強に、作文を書いてもらったことがあります。タイトルは「あなたが幼い子どものときに幸せと感じたコト」です。
その作文を読みますと、幸せと感じたことで一番多かったのが、「お母さんに絵本を読んでもらったこと」というのが圧倒的でした。そして、はるか15,6年前の幼児の頃の記憶なのに、「ぐりとぐら」「はらぺこあおむし」「おおきな木」などといった本の題名やストーリーまでも克明に書いている学生が少なくありませんでした。とても感動的です。
なぜ、お母さんに読んでもらったことがこれほどまでに嬉しかったのでしょうか。それは、実に簡単なことです。つまり、絵本を読んでやりたい、お話しを語ってやりたい、というときのお母さんは精神的に余裕があり、情緒が安定し、優しい気持ちのときだからです。考えてもみてください。夫婦喧嘩をしていたり、隣り近所とトラブルを起こしていたりして精神が不安定なときに、子どもに絵本を読んでやろうという気持ちになるでしょうか。
子どもはお母さんの優しい声が好きです。また、お母さんと同じことをするのが好きです。そのうえ、空想の世界に入れるのですから、こんなに嬉しいことはないのです。
どのお母さんも自分の子どもに対して、「心豊かな子になってほしい」と願っています。優しい、穏やかなお母さんとの触れ合いの中でこそ、子どもは情操豊かに育っていくのですから、どうぞ、いろいろな絵本やお話を読んであげてください。子どもは幸せな気持ちの中で、「豊かな心」という素敵な栄養をたっぷり吸収していくのです。
©Gakken