ひとくちに思考力といっても、「集中思考」と呼ばれるものと、「拡散思考」と呼ばれるものがあります。集中思考とは、いろいろな手がかりを利用して論理的に、一つの、あるいはごく少数の解答を導き出す考えのことを言います。例えば、算数でいえば「3+6はいくつですか?」という問題です。つまり、答えが一つしかありませんね。あるいは、理科でいえば、「ここに釘と鉛筆があります。磁石につくものはどちらですか?」といった類の問題です。従来のテストの問題は、結果が一つというこの種の問題が圧倒的に多くありました。もっとも今でも少なくありませんが。
それに比べて拡散思考というのは、ある手がかりをもとに創造力を駆使して、できるだけたくさんの解答を得ようとする考えのことです。例えば「どうすれば人間は寒さから身を守ることができるか」や「ここにリンゴがあります。このリンゴを使って、できるだけたくさん問題を作ってください」といった課題が、それにあたるでしょう。つまり、いろいろな方法を考えるわけです。従って、答えは一つではありませんね。 最近は、柔軟な発想が必要とされる、また、新しいアイディアを生み出す拡散思考的な力が求められるようになりました。この拡散思考の力は、幼児期においてどんな遊びをすればついてくるのでしょうか。
その遊びを1,2例あげますと、「折り紙をクシャクシャにして画用紙にはり、そこから想像していろいろな絵を描く」といったことや「画用紙にたくさん○(丸)を描いて、その○に線を描き足して時計にしたり、お皿にしたり、ドーナツにしたり、とたくさんの物を生み出す遊び」などが、それにあたります。
子どもがいろいろな素材を使って、日常何気なく遊んでいることの中に、拡散思考の芽を育てる遊びが結構あります。ですから、親保護者の方には、くれぐれも答えが一つといった問題だけ与えて、できた、できないということに一喜一憂されませんように・・・
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