3,4歳を過ぎた子どもに、カラスの写真を見せて、「これは、なあに?」と聞くと、「鳥」と答えます。次に、ハトの写真を見せて、同じような質問をすると、やはり「鳥」と答えます。バスやトラック、乗用車を見せても、「自動車」と答えます。お気づきでしょう。それぞれの固有名詞が出てこないのです。
つまり、いろいろな物の名前を覚える時期に経験が浅いとこのような答え方になってしまいかねません。物の具体的な名前を覚えること、すなわち言葉を豊かにしていくことは、その後の知識の広がりを考えるうえでとても大事な基礎の力になります。
その意味において家庭の中だけの生活だけでは、生活するうえで必要な言葉の獲得かTVやビデオ、絵本などからの間接的な知識しか得られず、どうしても限定された経験しか与えることはできません。
子どもが昆虫や乗り物、あるいは、動物など何かに強い興味を持つことがあります。そのこと自体は素晴らしいことですが、興味の持っていきどころを見つけるまでには、周囲の大人(主に、両親)が、動物園や植物園、水族館、博物館、遊園地、公園、デパートなど、いろいろな場所に一緒に行って、それこそいろいろなものに具体的に触れさせたり、目にさせたりする中で、子どもの内在する好奇心が触発され、さらに、探究する意欲が湧いてくる…そうなってこそ、本物の興味と言えましょう。
この強い興味が持続し、深まればやがて昆虫博士になったり、動物学者になったりするようになります。よしんば、そういう専門家にならなくても豊かな経験がもたらすことで幅広い知識が身についていきます。その素地を養う時期が幼児期、学童期から始まっているのです。
繰り返し言いますが。幼児期の子どもが自分だけで幅広い経験をし、知識を吸収することは難しいのです。身近な家族との日常生活の触れ合いの中で、また、家族が設定してくれるさまざまな機会をとらえることで、子どもの視野を広げ、後の生活の土台を作っているのです。どうぞお父さん、お母さんはそのことを理解していただいて、ご家族一緒に多彩な活動をしていただきますよう。子どもが大きくなって、一人で行動するようになる前に。
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