私たちが幼かったころ、夜寝るときに母親が添い寝をしてくれて、いろいろなお話をしてくれたことを覚えていますか。「桃太郎」「かちかち山」や「シンデレラ」など古今のお話をワクワクドキドキしながら聞くうちに寝入ってしまいましたよね。ときには、同じ話を聞いて、話しの筋が違ってきたときに「お母さん、そこは違うよ」などと言って、母親を苦笑させたことはありませんか。懐かしいでしょう。
また、祖父母と一緒に住んでいた方は、祖父母から折にふれて昔話を聞いていたでしょうね。本当に私たちは親や祖父母など大人が語ってくれるいろいろなお話しを楽しむ、それが入り口になって本好きになっていったものです。
語り聞かせは子どもの想像力を育てると言われます。それはなぜなのでしょうか。例えば、「桃太郎」を例に考えてみましょう。母親が「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」と話すと、子どもは「お母さん、昔っていつのこと?」と疑問に思ったことを聞きます。母親は「昔は昔よ」と答えにならない答えを言います。そして、「おじいさんは山へ芝刈りに・・・」と話すと、また、子どもは「芝刈りってなあに?」と聞きます。母親も芝刈りの意味が分からず、「うー。お父さんに聞いてみて」とはぐらかします。家に芝刈り機のある家庭でしたら、子どもはそれを想像しますよね。
さらに続けて、「おばあさんは川へ洗濯に・・・」。子どもはすかさず。「何で、川でするの、洗濯機ですればいいじゃない・・・」と不思議がります。こんな具合に昔話は子どもにとって疑問だらけです。でも、繰り返し聞くうちに、子どもの頭のなかでいろいろな想像をしています。「大きな川だと中に入ってできないな。それじゃ、浅い、小さな川なのかな?」「桃の中から生まれた子どもって、どんな子かな?」「桃って、どのくらいの大きさかな?」などといろいろな空想の翼を広げます。
毎回同じ話を聞かされても、子どもは飽きることがありません。そのたびにいろいろな想像をしているのです。こういったあれこれ空想する力、想像する力が幼児期に育まれていくと、やがてお話しから挿絵がなくなる本に出会っても、文章だけで読み取って楽しむ豊かな想像力がついていますよ。
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