「バウチャー制度」とか「バウチャー方式」といった言葉を、一度や二度は目にしたり耳にしたりしたことがあるでしょう。バウチャーとは、利用券や引換券を意味する英語であり、個人を対象とする使途制限のある補助金の一種です。教育のことに限れば、前もってバウチャーを配られた親は、それと引き換えにサービス提供者(学校や幼稚園)と契約を結び、教育を受けることになります。
このバウチャー制度は、そもそもアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンがその著書「選択の自由」の中で、バウチャーという言葉を使って学校教育における競争の重要性を主張したことが契機です。現在、アメリカの一部の都市や国家的な規模で導入しているスウェーデンなど各国で実施されています。イギリスでは保育に利用されたこともあります。
教育バウチャーの利点はどんなところにあるのでしょうか。まず、保護者がどの教育の機関で教育を受けるか選択する幅が広がります。また、途中でどうもこの施設と教育方針が合わないと感じたときは切り替えが自由にできます。このように、バウチャー利用者の選択権がありますので、サービス機関も競争によってサービスの質の向上が期待できることなどがあります。
デメリットとしては、サービス提供者(教育機関)もサービスの質の向上のために、逆に、利用者を選別することも考えられます。また、サービス提供者と利用者との間にトラブルが生じたときは、選択した利用者の責任として処理されてしまうことも考えられます。
現在では、教育に限定されず、保育や介護サービスなどの利用についてもバウチャー制度の導入が提案されています。しかし、バウチャー制度を取り入れるにあたり、バウチャーの配布は私立学校のエリート化(育成主義?)を加速し、学校間の格差を助長するものだという声もあります。
我が国においては、このテーマは何度もテーブルに載せられ、特に、安倍政権の時代は導入が争点となりました。しかし、慎重論もあり、加えて、首相辞任となり見送りになった経緯もあります。ただ、教育・保育や介護などの分野でバウチャー制度は、今後も導入の方向で議論されていくことと推察されます。
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