出生後、母親が乳児に与える授乳、オムツ替えなどの物理的世話や抱擁、絶え間ない話しかけなどのコミュニケーションなど乳児にまつわる全面的な育児のことを言います。いわゆる「母性的な育児」のことです。
昔は、乳児は無力な存在と考えられていましたので、マザーリングは母親の本能的行為とする認識が多かったのですが、最近の研究結果では乳児の心理的な有能さが証明されるに従い、マザーリングは、母親と乳児との相互作用によって形成されていくと考えられるようになってきました。
乳児のみならず母親の子どもに対するさまざまな行為が、母親にとっても、子どもにとっても快適な空間を形成しています。つまり、上手なマザーリングは双方の情緒を安定させてくれるのです。このような時間を多く有することで、お互いの気持ちが満たされていきます。そして、3,4歳になると、心理的安定のもとで母親とのふれあいを脱して、他の環境(友だちや物)と積極的にコンタクトをとるようになっていきます。心が安定していますので、友だちとのコミュニケーションが上手にとれるようになり、結果として友だちと仲良く遊ぶことによって、いろいろなルールを理解したり、譲り合ったりすることを通して、社会性の発達が助成されていくのです。
とはいえ現代では、核家族化や共働きの家庭が多くなって、なかなか十分にマザーリングが行えないのが現状ですが、それぞれの家庭環境の中で、精一杯子どもと触れ合うことが大切なのではないでしょうか。 マザーリングに対してファザーリングという言葉がありますが、それは次回にお話しましょう。
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