アニミズムとは、一般的には生物、無機物を問わず全ての物の中に霊魂もしくは霊が宿っているという考え方で、イギリスのタイラーがこの言葉を使用し、定着しています。日本では汎霊説とか精霊信仰などと記述されています。このアニミズムは世界各地のさまざまな民族の宗教や風習に見られます。
アニミズムは幼児の成長過程にも見られます。典型的なものとして、生命のないもの(玩具や車など)に生命や意思があると考える心理作用のことです。スイスの心理学者ピアジェは、この現象について、未成熟な子どもは、心の中の出来事と外界の出来事とが区別できていないことに要因を求めました。
このアニミズムを親が子どものしつけなどに活用する場合があります。積み木遊びのあとにちらばっている積み木を指差して、「ほら、積み木さんがバラバラで泣いてるよ。ちゃんと一緒のところにしまってね」とか、「あれっ、トマトさんが残ってるよ。早く食べてって言ってるよ」と擬人化して言う場合があります。幼児はそう言われると、あわてて片付けたり、食べたりします。
また、テーブルの角にぶつかって泣いていると、「テーブルさんはいけない子ね。めっ、してらっしゃい」というと、本当にテーブルのところに行って「テーブルさん、めっ!」とすることなども典型的ですね。
さらに、よく目にするのはお絵かきです。幼児の描いた絵によく見られるのは、チューリップの花にもお日さまにも車にも目や口が描かれていることです。つまり、何にでも目鼻を描く時期があります。このように描くことは、特に問題視することはありません。ある時期が過ぎますと、アニミズムの絵から卒業します。
幼児はこのようなさまざまなアニミズムを通して、やがて、生きているものと無機的なものとを峻別していくのです。
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