今まで、おとなしくて、素直な子どもだと思っていた子が、急に駄々をこねたり、赤ちゃん言葉を使ったりして戸惑わせることは、しばしば耳にします。親はいったいどうしたんだろうと、その原因をさぐろうとしますが、直接的な原因はなかなか思いあたりません。こういった子どもが急に幼い子どもに変化する現象はおおむね退行現象(赤ちゃん返り)などと言われています。
この現象は、お母さんに赤ちゃんが生まれ、その子どもに弟か妹ができるときに見られます。両親が赤ちゃんに目を向けていることからくる寂しさがそうさせているのです。また、お母さんが入院するなどして急に離れてしまったりしたときの不安からも起こります。
今まで独占していた両親からの愛情が、何らかの事情で感じなくなったときに、両親の愛情を復活させたいという願望がそうさせるのでしょう。そのために、手厚くかまってもらっていた赤ちゃん時代に返ってしまうことを言います。
これは幼児、とりわけ、一人っ子だった子どもに多い現象ですが、何も、子どもだけの専売特許ではありません。大学生の子どもが親の愛情を多く受けたいために幼い態度をとったり、成人が、母親の胎内回帰の願望をもつなども、似たような現象です。
子どもの退行現象では、まだまだ母子分離が確実にできていないことを考えれば、環境の変化がもたらす愛情不足と感じての行動ですから、しっかり受け止め、愛情をたっぷり注げば自然に解消していきます。そのためには、そっと抱きしめる、折に触れて優しく頭をなでてやるといったスキンシップはおおいに役立ちます。要は、子どもなりの防衛本能なのですから。
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