ちょっと聞きなれない言葉でしょう。これは、アメリカの損保会社で働いていたハインリッヒが打ち立てた安全に関する法則のことです。この法則によると、一つの重大事故が起きる前には、29の軽微な事故が発生し、また、その背景には300もの異常が存在するということです。ハインリッヒは損保の会社で事故に関するデータを収集し、結果としてこのような法則にいたったのです。
この安全に関する法則は我が国の鉄道会社でも考え方を取り入れたり、他の分野でも安全管理に関して注意するために活用してきました。いずれにしても、事故が起きるときは、その前兆があり、従って、その前兆の出来事を未然に排除して事故を防ぐことが大事であるというわけです。
大事な子どもを預かる保育園や幼稚園では、予測しえない子どもの行動があり、また、行動範囲も規制しづらいという観点から、このハインリッヒの考え方を導入している園が少なくありません。ただ、ハインリッヒの法則は細かすぎるので、それを簡便にした、施設の中で子どもが事故を起こしやすい個所(園庭の遊具や階段など)を特定し、事故になりそうな行為(廊下を走る、滑り台を下から昇るなど)をあらかじめ設定し、それらの項目を作成し事故に備えています。こういった項目は、ヒヤリとしたりハッとしたりすることなので、現場では、それを「ヒヤリ・ハット表」などと名付けています。
これは幼児、とりわけ、一人っ子だった子どもに多い現象ですが、何も、子どもだけの専売特許ではありません。大学生の子どもが親の愛情を多く受けたいために幼い態度をとったり、成人が、母親の胎内回帰の願望をもつなども、似たような現象です。
一般の家庭生活においても、家の中にはヒヤリとしたりハッとしたりすることが意外とあります。例えば、ハサミや包丁などの管理、ベランダの手すりの側の台、電話台の鋭角的な角、あるいは、出かける際の交通ルールなど、結構、注意しないと危険ですよね。ですから、日頃から、必ず、注意する点だけは家族で意志統一を図り、子どもも交えて徹底して守ることを励行するようにしておくと良いでしょう。
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