「子育ては楽しく」がモットー! ……とはいえ、現実はなかなか理想どおりにはいきません。子どもとの接し方や父親の育児参加など、答えの見つけにくい問題に直面することも。
そこで今回は、そんな悩みに対して、幼児教育の専門家で、自身も二男一女の父である大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)先生にアドバイスをいただきました。
監修/大豆生田啓友 (玉川大学教育学部乳幼児発達学科准教授)
構成・文/小菅由美子
イラスト/池田蔵人
休日に妻が出掛け、ぼくが娘と2人きりで留守番をすることが増えてきました。しかし何をして遊べばいいのか分からず、ついテレビに逃げてしまいます。(2歳7か月・女の子)
パパにとって、女の子の遊びはなかなか難しいですね。子どもによって好きな遊びは異なりますから、その子のしたいことに付き合うのがいちばんです。テレビやビデオは簡単ですが、できればそれ以外の遊びにチャレンジしてみたいですね。室内であれば、粘土(小麦粉粘土がお勧め)、ブロック、パズル、お絵かき、お人形遊び、じゃれっこ遊びなど、さまざまな遊びがあります。お絵かきであれば、「何、かこうか?」と問い掛けてみれば、子どもからいろいろリクエストがあるはず。子どもに聞いてみると、子どもが遊び方のヒントを教えてくれますよ。
最近、ぐずりがひどいです。公共の場で泣きわめかれると、周りの迷惑にもなりますし、放っておくわけにもいきません。どうしたらいいのでしょうか。(2歳5か月・男の子)
「いやいや期」ですね。反抗期とも言いますが、反抗しているわけではありません。この時期の子どもはなんでも自分でやってみたいけれど、うまくいかないと感じることが多く、自分でもどうしていいか分からなくて困っているのです。しかって解決するものではありません。少し気持ちを切り替えるようなかかわりをしてみましょう。例えば、抱っこして、少し人込みから離れて、背中をとんとんしてあげると落ち着くことがあります。「家に帰ったら大好きなおやつがあるよ」など、楽しい見通しを話してあげることも一案です。親にとっても大変な時期ですね。嵐が去るまで、少しの間の辛抱です。
夫が子どもを甘やかします。しかるときは「そんなことをすると、ママにしかられるから」としか言わず、わたしが悪者になるばかりでつらいです。(3歳4か月・女の子)
いいところだけパパに取られてしまうと、ずっと子育てに向き合っているママとしてはとてもつらいですね。そうしたつらい思いは御主人に伝えたのでしょうか。まずは一度、2人で子育てについて話し合う機会を持ってみてはいかがでしょう。ただ、御主人としては自分なりに頑張っているのかもしれません。そうしたことは認めつつ、御主人にもっとしてもらえるとありがたいことを伝えるのがよいでしょう。それでも、すぐにはうまくいかないかもしれません。でも、ママのおかげでパパが子どもとよい関係を築けているのですからママは大事な役割をしているのです。どうぞ、自信を持ってください。
子どもが音の鳴るおもちゃのような本ばかり欲しがります。そろそろ簡単な昔話や物語などにも親しんでほしいのですが、興味を持たせるこつはありますか?(3歳9か月・女の子)
幼稚園や保育園では、音の鳴らない普通の絵本をたくさん読んでいます。まずは、園で興味を持っている絵本から入ってみましょう。図書館を利用するのもよいですね。図書館には音が鳴るような本はありませんから、子ども自身に自由に選ばせれば、興味を持つきっかけになるかもしれません。大切なのは、1人で読ませるのではなく、読んであげること。たくさん読んでもらう中で、次第に1人でも読んでみようと思うようになっていきます。また、家庭の中ではテレビやビデオを見る時間を減らしてみましょう。静かで退屈な時間ができると、絵本を読んでもらうことがうれしくなるものです。
スマートフォンに興味津々で、最近では自分で動画を探して見ることができるようになってしまいました。取り上げたほうがいいのでしょうか?(4歳5か月・女の子)
これからの子どもは、インターネットとの付き合いがますます密接になっていきます。そうであれば、親がある程度付き合い方をコントロールしていく必要があるでしょう。動画を見ること自体は、大きな問題ではありません。ただ、制限なく見る習慣が付いてしまうのがいちばんの問題なのです。この時期に好き放題にさせてしまうと、もう少し大きくなって、ゲームなどに興味が出てきたときに自制が効かなくなっていきます。幼児期は、直接体験が重要な時期。子ども自身が人や物に直接かかわるような経験をたくさんさせてあげるためにも、インターネットとのかかわりは制限したほうがよいでしょう。
上の子が、親の目を盗んで1歳の弟に意地悪をするので困っています。平等に接したくても、つい上の子ばかりしかりがち。どうしたらいいでしょうか。(4歳8か月・男の子)
親としては、ついついそうなってしまいますね。でも、これでは悪循環です。親はどうしても下の子のほうに手厚くかかわってしまいがち。そうすると、上の子はそれにしっとします。しっとするから、無意識に下の子に意地悪をしたくなってしまうのです。この悪循環を止めるには、意地悪をしかるよりも、上の子を思い切り甘えさせてあげる時間を意図的に作ることが大切です。こういうケースでは、上の子がたっぷり甘えさせてもらうことで自分の気持ちを満たし、下の子への意地悪が少なくなることがよくあるのです。ぜひ、そうした時間を作ってあげてください。
子どもが友達と遊びたがりません。引っ込み思案で、保育園でも友達とあまり遊ばないようです。どうしたら社交性が身に付くでしょうか?(5歳8か月・男の子)
親としては、我が子に友達がうまくできないと、とても不安になりますね。子どもにはさまざまなタイプがあります。社交性のある子がいる一方、人とのかかわりが苦手な子もいます。大人でも同じですよね。苦手な子に無理強いしても、なかなかうまくいきません。その子に合ったペースがあるのです。一人の時間を楽しんでいるのなら、温かく静かに見守りましょう。ただ、気の合う友達と意気投合する経験をすることで、驚くほど友達と親しくなることもよくあります。もし本人の中に「友達の輪に入りたい」という気持ちがあるようなら、そうした思いを園の先生に相談してみるのもいいかもしれませんね。
教室通いの友達が増えてきて焦りを感じています。でも経済的な余裕もなく、我慢しています。教育格差って本当にあるのでしょうか。心配です。(5歳2か月・女の子)
周りが習い事に行くようになると、心配になりますよね。でも幼児期は、習い事を通して学ぶよりも、幼稚園や保育園でさまざまな体験をして、興味関心の世界を広げることのほうが大切です。習い事に行かなくても、家庭の中で絵本を読んだり、会話を楽しんだり、公園で一緒に体を動かしたり、虫を見つけたら図鑑で飼い方を調べたり……、家庭でできる教育体験はたくさんあります。お金を出して習い事をさせるだけが教育ではないのです。幼児期は、遊びを通して夢中になり、知的好奇心を刺激する経験をたっぷりするようにしてください。それがその後の学習能力を伸ばすのに大いに役立ちます。
大豆生田先生は、幼児教育の専門家でありながら、ご自身も2男1女の育児経験を持つパパ。
そこで、ご自身がどう子育てを楽しんだのか、そのこつを3つ教えていただきました。
1人で抱え込む前に、制度やサービスを上手に利用して、楽しく乗り切りましょう!
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