自然の中を歩く楽しさを感じられたら、ぜひチャレンジしてほしいのが親子登山。日常の延長にある「ハイキング」とは違い、山にはコンビニもタクシーもありません。でも、だからこそ子どもはグンと成長します。そこで、ウェブだけの特別企画として、本格登山のための事前準備や、親子で登山を楽しむコツについて紹介します。
ハイキングの服装・持ち物についてはハイキングのページで紹介しましたが、親子登山では、それに加えて特に次の点に気をつけましょう。
●靴は登山靴
ハードな山道を歩く登山では、靴にこだわりたいもの。子ども用のサイズが見つからない場合は、靴底の凹凸があって、くるぶしを包んでくれるハイカットのスニーカーを選びましょう。
●登山地図、時計
子どもの探求心に付き合ってしまうと、道迷いや遭難につながります。大人は常に、今どこにいるのか、何分でどれだけ進んだのかを把握し、ペース配分をコントロールしてください。地図と時計は必携です。
※地図は、等高線やコースタイム載っている登山地図を準備しましょう。昭文社の「山と高原地図」シリーズは、全国のほとんどの山のものが出ていて、お勧めです。
●かっぱは防水透湿素材
雨が降りやすく、気温も変化しやすい山では、防水透湿素材の合羽がお勧めです。雨具としてだけでなく、防寒着としても活躍してくれます。
山歩きを成功させるコツはたった1つ。“我が家のペース”を見つけること。計画の見通しが立ち、気持ちにゆとりを持つことができます。
●同じパターンを繰り返す
たとえば25分歩いたら5分休む、また25分歩いたら5分休むというように、親子でルールを決めて、そのパターンを繰り返します。そうすると、30分で自分たちが歩ける距離や登れる標高差を理解できます。子どもにとっても、「僕は30分休憩なしで歩けるんだ」という自信につながり、気分に任せた歩き方をしなくなっていきます。
●ペースの目安
歩く速さは一定にしてください。速さの目安は次の2点です。
・呼吸が乱れないこと
・汗がむやみに噴き出ないこと
大人も子どもも気持ちよく歩ける、ちょうどいい早さが必ずあります。それを見つけて、“我が家のペース”を掴んでください。
どんなに低い山でも、山は山。そばに人がいて、便利な物に囲まれている町とは別物です。また、滑落や遭難の事故が命を奪うこともあります。
親子で山に登るときは、必ず次のことを守りましょう。
山の事故で一番恐ろしいのが滑落や転落です。子どもを事故から守るために、子どもは山側を、大人は谷側を歩くようにしてください。
傾斜のある道では、子どもが転倒したときにサポートできるよう、大人が斜面の下側になるように歩きます。登り坂では子どもを前に歩かせて、下り坂では大人が先を歩きます。大人が先に行くときは、ときどき後ろを振り返って声を掛け、子どもを安心させることも大切です。
山では、道に迷ったり、斜面で足を踏み外したりすることが、命に関わる事故につながります。親の目が届き、すぐに駆け寄れる距離を保つこと。子どもにも、離れすぎないよう、しっかり伝えてください。
書店では、ファミリー向け、初心者向けにまとめられたガイドブックがたくさん出ていますし、インターネットでは、体験談や天気情報などを、
リアルタイムで見ることもできます。それらを利用して、我が家にぴったりの山・コースを探してみましょう。
電車やバスから降りてすぐ、あるいは駐車場がすぐ近くにありますか?
万一道に迷ったときなどに、助けてくれる人はいそうですか?
コース内のトイレの場所を、あらかじめ確認しておきましょう。
トイレが少ない場合は、市販の携帯トイレをバッグに入れておきましょう。
山道では、人通りがなければ、道しるべが命綱です。「初心者向け」、「家族向け」などと表記してある、整備されたコースを選びましょう。
ただし、初めてのコースを歩くときは必ず家族全員で、ルートを調べておきましょう。
登山を続けていると、子どもが自分からハードルを越えようとする瞬間に出会うことあります。僕の息子はおむつが取れたばかりのころから山に登っているんですが、4歳の時、2000メートル級の、大人顔負けの高山を制覇しました。急な雨に降られる一幕もありながら、山小屋に1泊して、二日がかりで登頂したんです。
その数日後、息子が「自転車の補助輪を外してほしい」と言ってきたんです。僕は補助輪を外して、自転車にまたがる息子の背中を押してあげました。1回目は転んで、2回目は少しだけ長く走れたけどやはり転びました。ところが、3回目には、もう走れるようになったんです。ほんの10分ほどのできごとでした。
チャレンジする勇気や「自分はやれるんだ」という自信を、息子は山の経験から得たんですね。
『4歳からはじめる親子トレッキング』
関 良一・著 旬報社・刊
親子で山を楽しむための情報が満載! 初心者親子を、やさしく分かりやすく、高山ハイカーへと導いてくれる1冊です。