毎年冬になると、園などの集団生活の場で大流行する感染症。もしも子どもが感染症にかかってしまったら……。回復のために、感染を広げないために、家庭でどんな対応をすればよいのでしょうか?
監修/田村幸子(田村内科小児科医院・日本小児科学会小児科専門医)
構成・文/小菅由美子 イラスト/タオカミカ
高熱が数日続き合併症を起こすことも
突然の38℃以上の発熱、頭痛、せきや鼻水、下痢など、つらい症状になりやすいインフルエンザ。まれに、インフルエンザ脳症などの合併症を起こし、体のまひなどの後遺症を残したり、死に至ったりすることもあります。
感染が疑われたら病院へ行き、適切な治療を受けましょう。流行前に予防接種を受けておくと、感染の可能性を下げ、万が一かかっても重症化を防ぐことができます。
※登園停止の基準が定められている場合、再登園の際に医師から登園許可書を発行してもらい、園に提出する必要があります。
流行期に38℃以上の熱※が出て不機嫌な様子が続いたら、インフルエンザに感染した疑いあり。病院で診断を受けましょう。感染力が強いので熱が下がっても注意が必要です。インフルエンザと診断されたら、医師の許可が出るまで外出禁止。できるだけ人との接触を避けるようにしましょう。
※微熱だけのこともあります。
家庭内での感染を防ぐため、患者の部屋をほかの家族がいる部屋と分けます。難しい場合は、距離を離すだけでも効果があります。看病する人はできるだけ1人に決めて、患者と接するときはマスクを着け、接触後は手をよく洗いましょう。
下痢やおう吐を繰り返し脱水症のおそれも
「おなかの風邪」「急性おう吐下痢症」とも言われるウイルス性胃腸炎。冬に子どもの間で流行するものは、主にノロウイルス、ロタウイルスによるものです。
いつものように遊んでいたと思ったら、突然吐いたり、下痢をしたりすることから症状が始まります。どちらも抗ウイルス薬はなく、おう吐や排便で体内のウイルスを出し切ってしまうのが最善の治療法です。
ロタウイルスによる胃腸炎は、乳幼児の場合重症化しやすく、脱水症やけいれんなどの合併症を起こすこともあります。ぐったりして水分をとれない、尿が出ていないなどの場合は、病院で処置を受けましょう。
一方、ノロウイルスによる胃腸炎は、ロタウイルスの場合よりも軽症で済む傾向があります。
あおむけの姿勢でおう吐すると、気管支に詰まり、窒息につながるおそれがあります。上体を支えて起こしたり、いつ吐くか分からないようなら横向きで寝かせたりして、窒息を防ぎましょう。
おう吐物や下痢便には、ウイルスが大量に含まれています。床に吐いた物は新聞紙で覆うなどして速やかに処分しましょう。おう吐物が付いた食器や衣類もしっかり消毒し、家庭内感染を防ぎます。
胃腸炎では、脱水症にならないようにすることがなにより大切です。電解質の入った水分(経口補水液など)を、少量ずつこまめに飲ませましょう。頻繁に吐いていても、合間を見てティースプーン1杯ずつ、5〜10分ごとに与えると脱水症を防ぐことができます。おう吐が落ち着いてきたら、水分量を少しずつ増やしましょう。
以下のような症状が現れたら脱水症が疑われます。命にかかわる場合もあるので、すぐに病院へ行き、適切な処置を受けましょう。
細気管支炎や肺炎に至ることも
長引くせきやゼーゼーした呼吸が特徴のRSウイルス感染症。3歳までにほとんどの子どもがかかり、その後も繰り返しかかります。
3歳以上なら風邪症状で済みますが、乳児(1歳未満)が感染すると重症化しやすく、細気管支炎、さらには肺炎に至り、入院が必要になることもあります。家族の中に乳児がいる場合は、二次感染に注意しましょう。
夜間のせきが特徴
肺炎悪化で入院も
風邪と見分けにくい病気ですが、しつこいせきが特徴です。肺炎には至らず、気管支炎や風邪症状だけの場合もあります。
マイコプラズマに効果のある特定の種類の抗菌薬で治療することが大切です。悪化すると、たんが絡んだせきで眠れなくなったり、肺に水がたまって入院が必要になったりします。部屋を加湿し、水分をしっかりとって静かに過ごしましょう。
抗菌薬を最後まで飲んで再発・感染を防ぐ
幼児〜学童がかかりやすい感染症です。急な発熱とのどの痛みが主な症状(熱は出ないことも)。発しんやかゆみ、舌がイチゴのように赤くなるイチゴ舌、おう吐などが見られる場合もあります。
溶連菌を完全に退治するまで、抗菌薬でしっかり治療しないと、リウマチ熱や腎炎などの後遺症を残すことがあるので注意しましょう。
まれに皮膚に感染して、伝染性膿痂疹(とびひ)を引き起こすこともあります。