行動範囲が日に日に広がる幼児期。外出中、「気が付いたら迷子になっていた!」ということも少なくありません。いざというときにパニックにならないための対策をご紹介します。
監修/武田信彦(「うさぎママのパトロール教室」主宰、安全インストラクター)
構成・文/小園まさみ イラスト/カワダクニコ
子どもは大人より視野が狭く、自分の身長より上にある物には目が届きません。そのため、そばにいるつもりでも、子どもは「おいていかれた」と勘違いし、親を探して迷子になってしまうのです。また、好きな物を見つけて、つい走り出してしまったり、親と間違えてほかの人についていってしまったりすることも。
一方の大人も、外出先では注意が散漫になってしまいます。特にお金を出したり、商品を見たりするとき、あるいは急いでいて余裕がないときなど、子どもに対する意識が低くなりがちです。こうした条件が重なったときに、迷子になってしまう危険が高まるのです。
迷子になると、事故や犯罪に巻き込まれるリスクがぐんと上がります。家族や周囲の大人が協力し、できる限り子どもが1人にならない環境を作っていきましょう。
普段の生活や外出先での心掛けで、迷子を防ぎ、いざ迷子になったときにも見つかりやすくすることができます。日ごろから習慣化してきましょう。
外出する日は、人ごみでも目につきやすい色の服装をしたり、目印になるような帽子をかぶせたりするのがお勧め。出掛ける前にデジタルカメラや携帯電話で全身の写真を撮っておいてもよいでしょう。
いざというときのために、名前や連絡先を言えるようにしておけるとよいですが、住所や電話番号を覚えるのは幼児にとっては難しいもの。靴など、外から見えない部分に書いておくと安心です。市販の迷子札を使っても◎。
子どもは親が自分についてきているものと思い、迷子になっていると自覚していないことも。親が見当たらないときに、おかしいなと思えるよう、普段から手をつないで歩き、親が視界に入っているよう習慣づけましょう。
出掛ける前に「どこかに行きたくなったら、ひとりで行かないで言ってね。一緒に行くから」など、子どもに分かりやすい言葉で、約束しましょう。1人で行動しようとする気持ちにブレーキをかけてあげることで、迷子防止につながります。
外出先では子どもから目を離さないことが原則です。レジを待つ間やエレベーターの中などのちょっとした時間でも、できるだけ手をつなぎましょう。また、トイレやプレイスペースなども子どもだけで行かせず、必ず大人が付き添いましょう。メールや電話に夢中になるのもNGです。
デパートやショッピングモールに行く場合は、開店直後など、できるだけ人が少ない時間に行くとよいでしょう。親や店員に余裕ができ、子どもの様子に気づきやすくなります。
大人が複数いれば、動き回る子どもを見守る目が増え、1人1人の負担も減ります。ただし、「誰かが見ている」と思い込むのは危険。だれが見ているか、こまめに声を掛け合って確認しましょう。
子どもには「ちょっと」がどのくらいなのか分かりません。親の姿が見えなくなった途端、不安でその場を離れてしまうことも。少しの時間でも、子どもと一緒に行動するよう心掛けましょう。
兄姉など年上の子に下の子を任せてしまうこともありがちですが、子どもだけでは突発的な状況に対応できないので、避けましょう。
目的地に着いたら、はぐれたときのことを事前に決めておきましょう。「迷子になったらこの服を着たお店の人に声を掛けてね」など、具体的に伝えます。公園などでは、目印になる物を一緒に探して、その場所で待ち合わせするように決めるとよいでしょう。
子どもが迷子になってしまった場合は、速やかに対処することが大切です。いざというときに慌てないよう、対処方法を知っておきましょう。
まずは慌てずに、大きな声で子どもの名前を呼びながら近くを探しましょう。迷子がいると分かり、周囲の人も子どもに気づきやすくなります。近くの人に特徴を伝えて、心当たりがないか聞くのもよいでしょう。また、普段歩く速度から、どの辺りまで行きそうか予測して、探す範囲のめどを立てましょう。
5〜10分程度探して姿が見えなければ、お店の人や迷子センター、警察に連絡しましょう。いなくなった時間と場所、服装や髪型など見た目の特徴を伝えます。そのほか、性格や好きな物、呼び名もあわせて知らせると見つかりやすくなります。
お店の人や警察に頼んだ後は、落ち着いて指示に従いましょう。どうしても落ち着かなければ、相談したうえで、子どもを見失った場所の近くや、事前に待ち合わせていた場所を探しましょう。パニックになって勝手な行動をとるのは禁物です。
その子の体には触れず、「どうしたの?」と声を掛け、近くにいるお店の人やスタッフ、または警察にすぐに知らせましょう。手をつないだり、車に乗せたりすると、不審者と間違われることもあるので、注意が必要です。困ったら周りにいる人に「店員さんを呼んでもらえますか?」などと協力を求めましょう。1人で何とかしようとせず、周囲を巻き込んでいくことが大切です。