教育トピック
母子分離
乳児にとっては母親が何と言っても一番頼りになる存在ですよね。生まれてしばらくは、母親にほとんど依存した生活です。しかし、その生活も乳児が成長するにつれ、さまざまな外界との触れ合いを通して、いろいろな物に興味や関心を抱くようになってくると、次第に母親から離れても不安がらないようになってきます。この現象を「母子分離」ができてくると言います。
2,3歳ころになりますと、日常生活の中では、母親と多少離れても平気になってきますが、それでも長時間になるとまだまだ不安がります。この現象は自然ですから、母親が、母子分離が完全にできていないと心配することはありません。
また、子どもが幼稚園や保育園に行くころになりますと、この母子分離がうまくいかない場合がままあります。つまり新しい環境に入るときは、子どもは母親と離れることに不安を強く感じ、抱き付いて離れなかったり、激しく泣きじゃくったりする現象が見られます。
幼稚園や保育園の先生は、入園のころのこの母子分離の状態を把握していますので、適切な対応をしてくれます。そして、子どもの不安がる気持ちに寄り添い、優しく接してくれます。ですから、子どもも徐々に従来の母子分離に向かっていくようになります。むしろ、母親のほうが母子分離ができていず、むやみに心配し、園から離れないで子どもの様子をうかがったりするケースもあります。むしろこのほうが問題ですね。
この母子分離形成期における不安定さは成長する過程でどの子どもも大なり小なり経験します。幼い子どもの小さな心は大好きな母親を求めているのです。その子どもが小学生や中学生になると、母親を“うざったく”見ることもあるのですから、成長するということは、何とも皮肉なものです。
池澤 純二