あちこち動き回る子どもを見ていると、元気をもらえますね。しかし、子どもは運動能力や注意力が未熟なのに、好奇心はおう盛。転んだり危険なことをしたりして、けがをすることもたくさんあります。日常生活の中でよく起こる子どものけがに、焦らずに対処できるよう、家庭でできる応急処置の方法を紹介します。
監修/石川功治(たんぽぽこどもクリニック院長)
構成・文/井上 幸 イラスト/石川えりこ
子どもは、転んだり、鋭利な物に触れたりして、擦り傷や切り傷をよく作るもの。基本の手当てと早く治すためのポイントを紹介します。
傷口と傷口の周囲の汚れを、水道水でしっかりと洗って落とす。
消毒液を傷口に垂らして、出てきた泡を減菌ガーゼで押さえるように優しくふき取る。
傷より少し大きく切ったラップを傷にかぶせて、テープや大きめのばんそうこうで留める。入浴後や汚れたときなど、1日1〜2回、ラップを取り替える(ラップ療法)。
ラップをはるとなぜいいの?
・皮膚の代わりになって傷口を保護し、乾燥を防ぐ。
・傷口に張り付かないので、取り替えるときに再生した皮膚がはがれず、痛みもない。
出血が多いときは
血が出ているときは、止血をすることが先決。減菌ガーゼを傷口に当てて、浅い傷は軽く、深い傷は強く押さえます。指先などを切ったときには、心臓より高く手を上げていると早く血が止まります。
土や砂利が傷口に入り込んで取れないとき、傷がかなり深いとき、出血が続くときには受診を。傷がいたんだり、傷口周辺が赤くはれてきたり、傷が化のうしたりしたときも病院へ。受診するのは、傷の状態によりますが、深い切り傷は外科、擦り傷は皮膚科がよいでしょう。
鼻をぶつけたり、いじったりして粘膜が傷付いて出る鼻血。のぼせや興奮などでも起こり、特に幼児期によく見られます。正しい処置を覚えましょう。
軽くお辞儀をするような姿勢で子どもを座らせる。
ティッシュペーパーを長めのこよりにして鼻に詰める。小鼻を指で5〜10分ほど押さえながら、動かずにじっとしている。
こんな処置はダメ!
あおむけに寝転ばせたり、上を向かせたりすると、血液がのどに回って苦しくなるので、やめましょう。また、首の後ろをたたくことも効果はありません。
頭を打って鼻血が出たとき、処置をしても鼻血が止まらないとき、繰り返し鼻血が出るときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
用意しておきたい救急用品
急なけがに対応するため、右のような救急用品を最低限そろえておきましょう。また、救急箱の中身は、足りない物や古い物がないように、年に1度、点検することが大切です。
チェックリスト
□ ばんそうこう(大・小)
□ 消毒液
□ 脱脂綿
□ 減菌ガーゼ
□ テープ
□ 包帯(ネット包帯がおすすめ)
□ はさみ
□ ピンセット・毛抜き
□ ラップ(ラップ療法用)
※擦り傷・切り傷参照
3歳以下が約8割を占めると言われる誤飲ですが、幼児期〜学童期も食べ物を詰まらせることがあり、注意が必要です。飲み込んだ物によって対処が異なります。落ち着いて行動しましょう。
様子によっては、救急車を呼んで病院へ。受診するときには、いつ、何を、どのくらいの量飲んだのかを伝え、誤飲した物の残りや容器、容器の入っていた箱などを持っていきます。
食道や肺を傷つけたり、窒息したりすることがあるため、右記の物は吐かせずに受診をしましょう。
●揮発性のもの(石油、灯油、ガソリン、除光液など)
●強い酸性のもの、強いアルカリ性のもの(漂白剤、カビ取り剤など)
● 鋭利な物(画びょう、針、くぎ、ガラス片など)
●たばこ
●硬貨やボタン電池
●アクセサリー
●殺虫剤
【液体などを飲んだ場合】
顔が低くなるようにうつぶせにして抱え、大きく口を開かせる。舌の付け根を指で押して吐かせる。
【固体が詰まっている場合】
顔が低くなるようにうつぶせにして抱える。肩甲骨の間を平手で4〜5回強くたたく。
※口の中に指を入れて異物を探さないようにする。
判断に困ったら…
●化学物質や医薬品、動植物の毒などによる急性中毒の応急手当てや予防の知識について。
【(財)日本中毒情報センター】
https://www.j-poison-ic.or.jp/homepage.nsf
●急性中毒が発生しているときの対処についての電話サービス
【中毒110 番】
大阪中毒110 番(24 時間対応)
TEL 072-727-2499
つくば中毒110 番(9 時〜 21 時対応)
TEL 029-852-9999
※いずれの場合も、処置後は小児科へ行くようにしましょう。
※誤飲しないよう、危険な物は、子どもの手の届かない所へ置きましょう。
転倒やスポーツ中の事故などで起こる打撲やねんざ。その応急処置のポイントは「RICE」です。痛みやはれを防ぎ、早めの回復につながります。
できるだけ動かさず、安静にする。頭部や腹部などを打ったときは、横にして楽な姿勢にする。
患部にタオルや布を当ててから、氷などで冷やす。直接患部に氷などを当てず、冷やしすぎに注意する。
伸縮性のある包帯などで患部を適度に圧迫しながら、固定する。強く巻きすぎて、うっ血しないように注意し、数時間ごとに巻き替える。
患部を心臓より高く上げる。
*手足以外の打撲は、R(安静にする)とI(冷却する)を行う。
おふろはOK?
入浴は患部を温めるため、痛みやはれがあるときは避けたほうがよいでしょう。夏など汗をたくさんかいているときは、シャワーで汗を流すようにします。
・頭部、顔面の打撲
意識障害やけいれん、吐き気やおう吐があるとき、耳や鼻などから出血があるときには、救急車を呼んで病院へ。
・胸部、腹部の打撲
胸部打撲は、肋骨や胸骨などの骨折や内臓損傷のおそれがあるので受診しましょう。腹部打撲も内臓損傷が起こることがあるので、痛みが軽くても受診しておきましょう。
・ねんざ
2〜3日しても痛みがとれないときや、患部が変形したり、はれがひどかったりするときは、骨折の可能性もあるので病院へ。
熱い飲み物をこぼしたり、ストーブやアイロンに接触したりと、日常のちょっとした不注意から起こるやけど。素早い対処が傷の治りに大きく影響します。
すぐに流水で冷やす(約10〜15分)。
患部に水でぬらしたタオルを当ててから、氷などでさらに冷やす(痛みが和らぐまで)。
広範囲のやけどは必ず病院へ。また、水ほうができたり、皮膚が白くなったり、黒くなったりしているときも受診が必要です。小さなやけどでも痛みが長く続く場合には、早めに受診をしましょう。広範囲のやけどは、入院が必要になる場合もあります。
重症のときは衣服はそのままで
体全体に熱湯が掛かったときや、衣服が燃えたりした場合は、無理に衣服を脱ぐと一緒に皮膚がはがれてしまうことも。衣服の上から水を大量に浴びせて冷やします。そしてすぐに救急車を呼びましょう。
冷やしすぎない
凍傷になることがあるので、様子を見ながら冷やします。やけどの範囲が広い場合は、体全体を冷やすと体温を下げすぎてしまうことがあるので、冷やす時間は10分以内に。
水ほうはつぶさない
水ほう(水ぶくれ)は傷口を保護する役目があるので、できた場合はつぶさないようにしましょう。